スマホカメラで「RAW画質最強」は本当なのだろうか?1週間RAW画像で生活した結論

iPhone 15 ProにはApple ProRAWという機能があります

写真を趣味にしている方々からは、このようなアドバイスを受けることが多々あると思います。

「RAWで撮れば高画質」
「RAW一択」
「写真やるならRAW」

私も懇意にしてくださっている写真屋さんから、そのようにレクチャーされ編集の仕方についても教えてくださり感謝しています。

iPhone 15 Proを購入したのも写真のフォーマットにRAWがあったことが一番の決め手でした。

しかし、「iPhoneのRAWは本当のRAWではない」という一説を聞き、少し調べてみたくなりました。

今回の記事はRAW、JPEG、HEICの12MP~48MPというフォーマットに分けて検証してみました。

結論

スマホにおいて全ての画像のフォーマットをRAWにすることは、結構厳しいものです。

言ってしまえば、ほとんどの方はHEICで十分です。
SNSに上げるなど使い道を考えるとHEICの方が良いとも言えます。

用途別に考えてみると次のようなフォーマットが最適に近いのではないかと思います。

用途おすすめ
InstagramHEIC 12MP
XHEIC 12MP
LINEHEIC 12MP
家族写真HEIC 24MP
旅行HEIC 24MP
ブログ掲載HEIC 24MP
トリミング前提HEIC 48MP
Lightroom現像ProRAW
作品制作ProRAW

SNS関係はなぜHEIC 12MPで十分なのか

最低画質でSNSにアップロードすることは抵抗があるかもしれません。しかし、これにはきちんとした事情があります。

それは各SNSでの解像度制限(2026.5.31)にあります。

SNS推奨解像度ファイルサイズ上限実態
InstagramW1080px写真30MB1080px超過は自動的にダウンスケール
X1080 x 1080pxモバイルで写真5MB超過分は強制圧縮
Facebook長辺2048px写真30MB自動リサイズ

このようにSNS側の制限があります。
この制限下ではHEIC 12MPならばSNS側でのダウンスケールや強制圧縮を回避できます。

例えば10MBを超えるファイルをInstagramへアップロードすると、強めの圧縮がかかり、目に見える画質劣化が発生することがあります。

つまり48MPの大きなファイルを上げると「二重圧縮」されてしまい、逆に画質が落ちる逆転現象が起こります。

SNSでHEIC 12MPが最適な理由

iPhone 15 Proの環境だけかもしれませんが、HEIC 12MPで撮影したとき次のような画像になっています。

  • 解像度:4032 x 3024px
  • ファイルサイズ:約1.5~3MB

1080pからはみ出ていますが、やはり最適と言わざるをえません。

  • SNSが求めている解像度に近い
  • ファイルサイズもSNSの基準を守れている
  • Appleの処理が最適化済み

あとからトリミングしたい、大判印刷がしたいなどなければ適切なフォーマットだと言えます。

実体験:RAWで一週間過ごしてみた

今回の記事を書くにあたり、おもしろかったことは画質ではありません。
ストレージです。
試しに1週間ほどRAWで写真を撮りながら過ごしてきました。
1日に10枚前後撮っていたため、およそ70枚とします。

撮影対象は「道端の花」「雲の写真」「夕焼けの景色」「富士山」私にとって日常的に撮影しているものです。

その結果は予想以上のものでした。

およそ70枚で3GB以上ストレージを圧迫したことになります。
一概には言えませんが、1枚あたり30MBから60MBくらいのファイルサイズになっていたようです。
HEIC 12MPだとしたら3MBいかないかもしれないです。

正直にいうと画質の違いよりも容量が気になりました。

実体験:夕暮れのアジサイを比較してみた

比較実験に選んだ被写体はアジサイです。
アジサイを選んだ理由は単純で、情報量が多いからです。

  • 青と紫のグラデーション
  • 緑の葉との色分離
  • 複雑かつはっきりとした葉脈
  • 花びらの細かな重なり
  • 夕方の弱い光

これらのような理由でアジサイを被写体に選びました。
アジサイの季節できれいだったこともありますが。

実験環境

項目内容
端末iPhone 15 Pro
撮影フォーマット①HEIC 12MP
撮影フォーマット②ProRAW 48MP
被写体アジサイ
時刻5月中旬、曇天、18時前
閲覧環境Apple純正 写真.app
編集無編集

スマホで撮った写真はスマホの画面で見ることが多いと思い、閲覧環境はスマホ画面にしています。

実験結果

スマホではなくともカメラの撮像素子やレンズの性能差が出やすい条件です。
そしてこちらがHEIC 12MPとProRAWで撮影したものです。

HEIC 12MPが3024 x 4032pxでファイルサイズが1.3MB、Pro RAWはというと6024 x 8064pxでファイルサイズが60.3MBです。50倍近い情報量の違いが見て取れます。

しかしiPhone上で見てもあまり違いを感じることができません。

  • 色合いの若干の不自然さ(鮮やかさ)
  • 葉の鋸歯や葉脈がはっきりしている
  • 背景の壁のボケ感が若干のっぺりしている

HEIC 12MPはそのような違いが見て取れました。
しかし、プロから見れば全然違うもので、写真として売り物にならないほどの差があるのかもしれません。

どちらがアジサイっぽいかと尋ねるとHEICの方を選ぶ人が多く驚きました。
色鮮やかで見栄えが良く感じるからかもしれません。
確かにProRAWの方はなんとなく眠い感じの映りをしているようにも見えます。

なぜHEICの方が綺麗に見えることがあるのか

ここが今回の実験で一番不思議でおもしろいと思った部分です。

多くの人、特に一眼レフに触ったことがある人は、RAWは高画質だと思っています。

しかし実際は少し違います。
RAWは高画質ではなく、高情報量の写真データだったということです。

そしてiPhoneにはApple最大の武器があります。
それは、計算写真です。

iPhoneはシャッターを押した瞬間に次のことが同時に行われています。

  • Smart HDR
  • Deep Fusion
  • Photonic Engine

なにがすごいのかよくわかりません。
Smart HDR→Deep Fusion→Photonic Engineとパイプを通って写真が出力されるようです。

Smart HDRの仕組み

シャッターの前後に複数フレームを合成してハイライト/シャドウを両立する技術です。

【超短時間露光 x 4】→ 【短時間露光 x 4】 → 【通常露光 x 1】→ 【合成】

この工程を行うことによって明暗差の大きい写真をシャッター前に撮影します。
その後シャッターを押す前の準備をします。

Deep Fusionの仕組み

Neural Engineがピクセル単位で一番良い組み合わせを選びます。

【短時間露光(一番良いディテール)】を選び【通常露光(色や諧調)】の一番良いところを選びます。
そして、今回は葉脈など細かいところのテクスチャを再構成して、ノイズを中くらいから低程度で抑えながらディテールを最高によくする。

そういうAI学習的な計算を行い、次のPhotonic Engineへデータを渡します。

Neural Engineについては色々説明があったのですが、あまりにも多岐にわたること、そして公式の説明があまりにざっくりとしているため、ここでは触れません。すみません。

とにかく葉脈や細かいギザギザなどはDeep Fusionが最も得意とする領分のようです。

Photonic Engineの仕組み

iPhone 13以前はDeep Fusionからもらったデータを圧縮後に画像処理をしていました。
しかし現在は非圧縮の生のデータにする方針に変わりました。

これにより繊細な描写やテクスチャ、色、ディテールがより多く保存されるようになりました。

これら3つの工程を順番に行うことで、軽いファイルサイズ、人間が見たときにきれいな写真に見えるようHEICは作られています。

HEIC形式はファイルサイズとは異なる評価をしなければならないのかもしれません。

Apple ProRAWは普通のRAWではない

また、いろいろなところで言われていますが、「Apple ProRAW」は一般的なRAWとは少し違います。

一眼レフやコンデジなどの普通のカメラのRAWはセンサーの生データです。

しかし、AppleのProRAWは上記の処理が入っています。

  • Smart HDR
  • Deep Fusion

具体的にはこれらの情報も取り込んでいます。

つまり完全な生データではありません。
Apple流に最適化された編集向けデータです。

すでに少し編集が入っているため、Lightroomなどで編集をしなくても、元から割と見栄えが良いという現象が起きています。

最適解として:結局どれを選べばいいのか

  • SNSにしか上げない→HEIC 12MP
  • 思い出をきれいに残したい→HEIC 24MP, JPEG 48MP
  • トリミング編集は必ずする→HEIC 48MP
  • PCやアプリで現像する→ProRAW 48MP…RAWの価値はここにある

よくある質問(FAQ)

Q
RAWは本当に画質が良いのですか?
A

編集するならばいいです。撮っただけだとファイルサイズとストレージとの闘いになります。

Q
RAWで撮ればプロみたいな写真になりますか?
A

なりません。RAWはデータです。Lightroomなど現像ソフトを使うことにより、初めて作品になります。

Q
128GBモデルでもRAWは使えますか?
A

使えます。ただし、実験結果からわかるように常にRAWで撮影はやめておいた方がいいです。

まとめ

まずRAWは高画質フォーマットではありません。編集用フォーマットです。

しかもiPhone 15 ProではAppleの画像処理が非常に優秀なため、撮って出しならHEICの方が綺麗に見えることすらあります。

一方で、写真現像ソフトを使い「作品」を作る、または大幅な補正を行うといった場合は、RAWは必須といっていいくらい強力なデータです。

私自身、1週間RAW生活をしてみて感じたのは、画質より先にストレージが悲鳴を上げました。

たしかにRAW最強説は間違いではありません。

つまり、RAWはカメラマン向けのフォーマットだった。
そしてHEICは人に見せるためのフォーマットだった。
スマホで撮る写真の多くは、人に見せるための写真だった。

つまりはそういうことでした。

公式リファレンス

Apple ProRAW
https://support.apple.com/ja-jp/119916

Apple カメラアプリ
https://support.apple.com/ja-jp/guide/iphone

Apple ProRAWとProResについて
https://support.apple.com/ja-jp/guide/iphone/iphf081a2de2/ios

HEIF(HEIC)フォーマットについて
https://support.apple.com/ja-jp/116944

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