エアコンが設置できない部屋で「水冷サーキュレーター」を自作してみた結果

毎年毎年、夏になると例年よりも気温が高いと天気予報では告げられています。

今年は部屋の引っ越しがあり、クーラーのついていた屋根裏部屋から行き止まりの納戸へと移り住みました。「エアコンの設置できない部屋をどう冷やすか」このことがまず頭をよぎりました。

賃貸住宅で壁に穴を開けられず、窓用エアコンも規格が合わず扇風機だけで過ごす人もいるはずです。

私の部屋もまさにその環境です、タンスが二竿あるため160*60*200cmほどしかない小さな空間で、PCを稼働させるため、排気で温度がひどいことになりそうです。

そこで「水冷式PCがあるならば、同じようにサーキュレーターを水冷式っぽくしたら冷風が出るのでは?」という閃きでした。

結果から言えばお蔵入りです。室温は確かに下がりました。しかし、予想していなかった問題が発生し、この装置の運用はできないと判断しました。

この記事では、実際の測定結果と失敗した原因を、熱力学や水冷式PCの仕組みと比較しながら詳しく紹介します。

実験環境

使用した機材と気候条件について触れたいと思います。

使用した機材

今回使用した機材は以下のとおりです。

  • 水冷ラジエーター G1/4(4,717円)
  • 保冷バッグ型クーラーボックス15L(2,899円)
  • USB水中ポンプ(869円)
  • G1/4ホースバーブフィッティング(886円)
  • 内径8mmシリコンチューブ2本(1,118円)
  • SK11ホースバンド2個(400円)

総額は約11,000円でした。なかなかの出費になってしまい驚きました。

仕組みはとても簡単で、クーラーボックス内の氷や凍らせたペットボトルで冷やした水をポンプで循環させ、ラジエーターへ送り、サーキュレーターで風を通すだけです。

測定条件

実験日は2026年6月26日、天気は曇り時々雨。最高気温は26度予想。開始時刻は12時08分。

スマホの天気予報。室温より外の温度の方が低い。

開始時点での室内環境は以下の通りでした。

開始時点での室内環境
  • 室温:31.9度
  • 湿度:44%

実験結果

約2時間半後、14時32分に再測定をしました。

結果は次の通りです。

温度は3度下がったが、湿度が30%上がってしまった。
  • 室温:28.2度
  • 湿度:71%

室温だけ見ると3.7度も下がったことで、目標を達成したかのようにも見えます。

成功。と言いたいところですが、部屋の中で空気がまとわりつくような感じがします。そして、湿度70%超え。PCを動かすことすら危うい状況です。

快適とは涼しくするだけではなく、生活ができるかということを身をもって体験しました。

お蔵入りした水冷サーキュレーター

なぜ失敗したのか

色々考えてみましたが、結論は冷えた水を使っているからです。

最大の敗因はチューブの結露

水冷式のラジエーターを片付けているときに、チューブがうっすら湿っていることに気が付きました。

計画段階ではラジエーターだけが冷えると考えていましたが、実際には氷で冷やされた水が流れるチューブ、金属の部分、クーラーボックスまでひんやりと結露していました。

つまり、部屋中に冷却器を張り巡らせ、微細な水滴を振りまいていました。

水冷式PCでは結露しないのに、なぜ今回は結露したのか

水冷式CPUクーラーをヒントに思いついた水冷サーキュレーター、なぜ水冷式CPUクーラーは平気だったのだろうと疑問に思いました。

水冷式CPUクーラーは結露しない、またはほとんど発生しないと聞いています。

色々調べたところ、CPUの温度は40~90度くらいを想定してあり、チューブを流れる冷却水も30度~45度くらいだということがわかりました。

つまり、水温が室温に近く、露点温度を下回ることが稀であるということでした。

しかし、私の水冷サーキュレーターは氷で冷やした水を使いました。

  • 冷却水:約5度~10度くらい
  • 室温:約30度
  • 湿度:約44%

この条件では結露する温度はAIで計算したところ、「18度」と出力されました。

氷で冷やされた水が通るチューブ表面は露点温度を大きく下回るため、空気中の水蒸気が次々と水滴へ変わるという現象が起きていました。

水冷式CPUクーラーは「CPUから熱を運び出す装置」です。空冷も変わらないですね。

しかし今回の装置は「低温の冷媒を室内に露出させた冷却器」となり、結果結露を起こし部屋の湿度を挙げていたようです。しかし、犯人はラジエーターだけではありません。

  • ラジエーター
  • シリコンホース
  • フィッティング
  • 水中ポンプ
  • クーラーボックス

これら全てが冷却面となって、大量の結露と湿度を発生させていたのでした。その結果、部屋全体の湿度が30%近くも上がり、快適性やPCの寿命を損ねる結果となったのではないかと考えます。

実験から得られたこと

この実験は明らかに失敗でした。しかし、失敗だからとはいえ意味のないものとも言えません。

まず、実際に測定したことで、温度だけ下げても涼しくならないという事実が確認できました。

また「露点」の概念です。ごりごりの文系ですので初めて知った言葉です。その露点という要素が自作冷房ではとても重要であることが理解できました。

まだ夏本番までには時間があります。次の点を改善し、使える水冷式サーキュレーターを作ります。

  • シリコンチューブ全面を断熱材で覆う
  • クーラーボックスも断熱する
  • 結露で出来た水をどうにかこうにかして回収する
  • 除湿器を買う

など、熱だけでなく湿度まで設計計画に入れる必要がありました。

よくある質問(FAQ)

Q
室温は下がったのに失敗なのはどうして?
A

温度は約3.7度下がりましたが、湿度が44%から71%へ上昇しました。体感温度やPC環境への負担を考えると、快適な空間とは言えないからです。

Q
チューブに断熱材を巻けば改善に繋がりますか?
A

シリコンチューブの結露のだけには効果があるはずです。しかし、ラジエーターや保冷バッグも冷却器となっているため、完全な解決には全体を結露から保護する断熱設計が必要です。

Q
市販の冷風機と同じ仕組みですか?
A

違います。今回の水冷サーキュレーターはラジエーターを利用した循環式冷却です。市販の冷風機は気化式冷風機というそうで、冷却する仕組みそのものが違います。

まとめ

今回の実験では、室温を下げるという目的自体は達成できました。しかし、人が暮らす上で快適と感じる環境には温度だけではなく湿度も関係していました。

今回の失敗は、結露という現象を甘く見ていたところにあります。だからこそ全体的な断熱設計という次へと繋がる貴重なデータが取れたと思います。

「自分で作る」ということは成功だけが価値ではありません。

失敗を数値で記録して、常に原因を考えること。常に問い続けることが別の誰かが同じような課題に当たる際の有益な情報になります。

この記事が、エアコンを設置できない状況の誰かの参考になれば幸いです。

リファレンス

気象庁「乾湿計による蒸気圧,露点温度,相対湿度の計算」
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kansoku_guide/tebiki.pdf (p.28)

環境省 熱中症予防情報サイト「暑さ指数とは?」
https://www.wbgt.env.go.jp/wbgt.php

Corsair Hydro X Series Documentation
https://www.corsair.com/jp/ja/explorer/diy-builder/custom-cooling/hydro-x-xc7-rgb-pro-cpu-water-block-instruction-manual/

Noctua Technical FAQ(空冷・水冷・熱に関する部分いくつか)
https://www.noctua.at/en/expertise/guides/air-cooling-or-water-cooling-which-one-to-choose

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